「マイ会計」会計をもっと身近に。世界は会計でできている[石井友二]

社会人の三種の神器は、会計、IT、英語ですが、このなかで最も重要なのは会計です。会計がいかに日々の生活に入りこんでいるのか、また日々の生活を支援するのか、明らかにしていきます。会計を知り活用すれば人生を謳歌できます。充実した人生を送るための会計についてご紹介していきます。

大まかな財務会計と繊細な管理会計が経営を支える

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 財務会計は報告のための会計であり、管理会計は文字通り管理(マネジメント)のための会計です。

 

財務会計は、貸借対照表損益計算書、そしてキャッシュフロー計算書の財務三表が基礎になっていますが、管理会計は縦横無尽にこれらを支える道具として活用されます。

 

ここにすなわち、財務会計は、

1.資金の調達と運用を表し、資産=負債+資本で表現される期末日現在の財政状態を示す貸借対照表や、

 

2.費用+利益=収益で表現される一年間の経営成績を示す損益計算書

 

3.期首現預金残高±(営業により得られた)営業キャッシュフロー±(投資を行ったり回収することを表す)投資キャッシュフロー±(財務的な資金の動きを示す)財務キャッシュフロー=期末現預金残高という構造になっているキャッシュフロー計算書の作成のために行われます。

 

 結果、一年間の損益がどのようになり、お金がどう動き、期末に翌年に事業活動の基礎となる資産、負債、資本がどのように変化したのかを情報を明らかにすることができます。

 

企業経営の全体像をどのように掴むか、ということでは、株主や債権者などの利害関係者にとって十分な情報提供を行なうものです。

 

しかし、経営者や、管理に関与する中間管理職、さらに業績を求められる社員にとってみれば、それだけでは十分ではありません。企業のなかにいる人々には、財務会計から得られる情報は一部であり、それだけでは足りません。

 

1.損益分岐点分析や、

2.月次決算、

3.予算実績管理といった管理会計が必要だし、

4.時々は財務分析や投資経済計算を、そして日常においては、

5.売上高はどのようにつくられたのか(どうつくるのか)、.原価は、販管費はどうか、といった損益計算書の各勘定について、事業環境や競合状況を背景に持った上での、指標管理が行われなければ日々の行動が適切に行えません。

 

(実は、金融機関などの債権者や投資機関も、財務諸表だけでは足りず、財務分析を行ったり、一部の詳細な指標情報を企業から得て、分析作業を行うので、一定の管理会計がなければ活動を担保できません)。

 

財務会計を説明する管理会計が必要な理由です。

 

財務会計は体系的、継続的に行われる制度としての会計ですが、管理会計は上記で説明したように、ほぼどのようなものが日常使われるものは、ほぼ決まっているものの、分析の対象や方法は企業ごとに異なり、制度としてこれを使え、というものはありません。

 

建設業は建設業の、製造業は製造業の、卸、小売りやサービス、IT等々どのような業種でも業種なりの、またそのなかでも企業なりの管理会計が定期的、もしくは随時使われ、経営や実務を行うために利用されているのです。

 

 整理すると、財務会計は報告のための会計なので、分かりやすさや比較可能性を担保するために、ルールが厳格に決められていますが、財務諸表を利用する者にとっては必要十分な条件をもちつつ、経営に関する情報はもっていません。

 

 その意味では大まかです。

 

 それに対して管理会計は、経営に関する会計として、業種や会社ごとに活用の対象や方法がさまざまであり、財務会計を行う詳細な基礎情報や、財務会計を円滑に行える情報を管理し、意思決定や組織運営に使われていることが分かります。

 

 財務会計が企業の業績をダイレクトに示す会計であるとすれば、管理会計財務会計をつくるためや、分析するための会計であり、横糸と縦糸のように織りなし、企業経営を定量的に支えているのです。

 

 なお、事例を説明しながら管理会計の一手法である指標管理が、いかに財務会計とつながっているかを解説します。

 

 損益計算書の売上高は、数量×単価で計算されます。Aさんが100を20円で××社に売りました。売掛金2000/売上高2000と仕訳され、損益計算書に売上高2000円が、貸借対照表には売掛金が2000円計上されます。 

 

 ですが、詳細な数量や単価情報は、損益計算書には記載されません。貸借対照表でも顧客先別、時期や頻度も不明です。

 

 もちろん、仕訳→仕訳帳→得意先元帳→総勘定元帳→財務諸表の流れで行われる財務会計の中で記載されるデータはありますが、加工しなければまとまった活用できる情報にはなりません。

 

 損益計算書から得られない単価情報や購買情報についても商品別、顧客別に把握し、分析したうえで仕入ポートフォリオや営業活動に活かさなければなりません。

 

 指標化して管理会計の対象としながら成果を挙げる情報としていくことになります。

 

 営業についても訪問件数や回数、面談時間、有効面談時間等の指標管理を行い、効果的な営業を行えるよう現場が動きます。

 

 このように現場では、管理会計財務会計成立のの基礎とするとともに、管理会計の活動結果(=情報収集→分析→仮説→検証行動)をもって財務会計(成果)を一定の方向に誘導する、という活動が行われているのです。

 

 マイ会計では、自分の損益計算書貸借対照表を作成して、年間給与の総額の分析をします。

 

 例えば、社員であれば、どうして時間外が多かったのか、賞与が少なかったかの原因を、自分の行動や生活の観点から分析し、仕事の効率が挙がらなかったのは、勉強の時間が少なかったとか、コミュニケーションがうまくとれていなかったことや、プライベートを大事にしすぎたとかの情報を整理したとします。時間や回数、件数、パーセント等を指標にすると分かりやすいですね。

 

 これらについてこうありたいという計画を立てます。

 

 時間外××時間以内、勉強時間毎日2時間、読書1時間、コミュニケーションを毎日必ず10人と取るなどの指標を設定、日々実践しながら自分をあるべきかたちに修正していきます。

 

 実務の中でも管理指標(KPI=重要成功指標)を設定し、クリアーし、成果を挙げ、次の給与や賞与を増やそう、といった具合に考えます。KPIは、KGI→KFS→PD→KPIと設定します。何処かで詳しく説明しますね。

 

 組織でも、個人でも会計の知識を身につけ、財務会計管理会計をうまく使いこなして成果を挙げていく。これからの時代、とても大切なことだと私は思います。