「マイ会計」会計をもっと身近に。世界は会計でできている[石井友二]

社会人の三種の神器は、会計、IT、英語ですが、このなかで最も重要なのは会計です。会計がいかに日々の生活に入りこんでいるのか、また日々の生活を支援するのか、明らかにしていきます。会計を知り活用すれば人生を謳歌できます。充実した人生を送るための会計についてご紹介していきます。

資金繰りって、どんなこと?

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 「資金繰り」はよく使われる言葉です。お金のやりくりの事ですね。

 

 個人では「お金がないんで今月苦しいよ」というときに、企業で経営者は「今月資金繰りが苦しい」というだけのことで、個人の現金があるかないかと、企業で現金があるかないかは同じです。  

 

 資金繰り表は、企業のお金のやりくりを行う表です。

 

 もう少し丁寧にいうと、資金繰り表は、定めた区分や勘定科目に基づき、毎月のすべての現金(預金)収入と現金(預金)支出を集計して、現金収支の動きをみる表、です。

 

 現金が貯まるケースも、現金が不足するケースもあり、現金過不足の現状を把握することを目的として作成します。

 

 会社によれば、資金繰り表を毎日作成し、資金不足となる状況を予測しながら、不足する時期までにどのように手当するのかを考えて行動する、という活動が行われています。

 

 資金不足にならないように、売上を伸ばし、回収を促進する。また、経費の支出を無くしたり、遅らせたり、支払いのサイトを伸ばすこと、銀行から借入を行う等(様々な取り組みがあり、ここでは書ききれません)といった対応をとります。

 

 資金繰り表の構成は、現金預金について前月繰越残高±経常収支±財務収支=次月繰越残高となります。

 

 経常収入は当月収入―当月支出です。  

 

 当月収入には、簡単にいえば、現金売上+売掛金回収+前受金入金+その他の入金、経常支出は現金仕入+買掛金支払+前払金支払+人件費支出+未払金支払+その他の支出が該当します。

 

 現金の入出金を見るとき、上記の式で見ると分かりやすいんですね。入金ですが、現金で売り上げれば現金が入るし、売掛金を入金すれば現金が増えますね。

 

 前受金は先に現金を入金することですが現金が増えることには変わりありません。その他何らかの理由で現金をもらえば現金収入になります。

 

 出金は反対の事です。現金で仕入れれば現金は出ていくし…と考えてみてください。

 

 財務収支は、財務収入―財務支出です。借入をすれば現金は増えるし、借入金の返済をすれば現金は減りますよね。

 

 また、投資をして現金を支払えば現金が減る、という管理を行います。営業活動ではなく、財務活動の分は区分して計算する仕組みになっています。

 

 経常収支で資金不足のときに、財務収入で資金を確保するよう、経営を行うんですね。

 

 お金を借りて投資をして月末現金残高が減るということも場合によればありますが、一番は、経常収支でいつもプラス。

 

 財務支出しても月末現金残高が増えるといった状態がときにはベストです。

 

 ただ、キャッシュをため込むことが経営ではないので、この辺は戦略によりますね。

 

 まだ、簿記の学習をしていない方に分りやすく再度の説明をしますね。

 

 現金で売上れば、対価として現金が入るし、現金で仕入れをすれば現金が出ていく。また掛売でうったものが回収できれば現金が入るし、掛けで買ったものについても支払い日がくれば現金で支払う。

 

 また、先にお金渡しておくね、と前受けでお金をもらったり、先に払って欲しいといわれお金を払ったり、給与を払ったり(給与も現金で払われますよね)、経費の未払いを払ったりのようなことで上記が成立しています。

 

 財務収支は上記に記載した通りです。

 

 結局資金繰り表は、損益ではなく、現金(預金)の動きがどうか、現金の残高はいくらなのかを計算するシートなんです。

 

 キャッシュフロー計算書でも同じようなことが行われ、営業上で増減するキャッシュは、営業キャッシュフロー、投資をしたり回収したりは、投資キャッシュフロー、そして財務的な借入や返済は財務キャッシュフローとして表示します。

 

 ただ、資金繰り表は日々の動きをみるのに適していますが、キャッシュフロー計算書は全体を少なくとも月次の貸借対照表の比較により、現金増減の要因分析を各勘定科目の差引で計算しています。

 

 簡単にいえば、売掛金残高を月末―月初でみて差額がプラスであれば、売掛金が回収できていないので、現金は減少したとか、買掛金残高を月末―月初で見た時に、残高が増えていれば、支払いをしていない分現金が増加した、といったように見ていきます。

 

 同じ現金を扱うにしても、資金繰り表とキャッシュフロー計算書では、少し考え方が異なりますね。

 

 マイ会計で資金繰り表はつくれますね。

 

 文字通り給与が手取りでいくらはいる。家賃や光熱費の支払いがいくら、残りはいくらと分かります。

 

 個人では減価償却費のような経費になるけど現金支出がなく、利益はでていないけど現金は減っていない、といった損益計算書と現金の動きの違いがなく、すべて現金(預金)で計算ができるので楽です。

 

 家計簿をつけている方は分かりますが、家計簿そのものが資金繰り表といっても過言ではありません。

 

 「損益は意見であり、現金は事実である」という言葉があります。これとても大事で覚えてくださいね。

 

 会計の世界は、企業の実態をできるだけ忠実に表そうという意図はあるものの、会計処理は複数あり、現金の動きと合致しないので、やっかいです。

 

 何回も出てくる事例ですが、掛けで売上が上がって利益が出ても、売掛金が回収できなければ、現金は入ってきません。

 

 また、掛け仕入れをして費用がかかり、損が出ても、買掛金を支払わなければ現金は出ていきません。

 

 利益が出ても現金はないし、損が出ても現金はある、のようなことがあり、損益と現金は同じ動きをしない時もあることが分かります。

 

 なので、損益計算書だけ見ていても現金の動きは分からず、貸借対照表と併せキャッシュフロー計算書により、大きな月次のながれをみる必要があります。

 

 そして、日々の現金(預金)の動きをみるためには、資金繰り表が不可欠ということでした。

 

 結局事業は、いくら利益が出ていても、お金がないと事業継続できないことを今回も知る必要があります。

 

 黒字父さん、いや、黒字倒産は売り上げが上がっているのに売掛金が回収できずに起こります。企業も個人も、現金大事ですね。

 

 これからは節約や物をなるべく持たないで事業をしたり、生活しなければならない時代がしばらく続くので、留意が必要です。

 

1.現金の動きを資金繰り表でつかむこと、

2.キャッシュフロー計算書との相違を理解すること、3.そして改めて損益だけではなく、現金の日々の動きをみるために資金繰り表をつくらなければならない

こと、

4.おまけとして、現金は大切なこと

を学習しました。

 

 次回は、中期経営計画について考えてみます。