「マイ会計」会計をもっと身近に。世界は会計でできている[石井友二]

社会人の三種の神器は、会計、IT、英語ですが、このなかで最も重要なのは会計です。会計がいかに日々の生活に入りこんでいるのか、また日々の生活を支援するのか、明らかにしていきます。会計を知り活用すれば人生を謳歌できます。充実した人生を送るための会計についてご紹介していきます。

財務分析で自社を知り、前進しよう!

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 財務分析は、貸借対照表損益計算書の各勘定科目や項目を活用し、安全性、収益性や生産性、成長性を分析し、それらを作成している企業の状況を把握する方法です。

 

 業界のなかでの位置づけや、競合他社との比較を行うことで、どこが強くどこに弱みがあるか、また、強みをもっと強くしたり、弱みをどう改善すれば良いか、情報を得ることができます。

 

 なお、第三者も同じ見方で自社を評価するため、どう見てもらえるかという点からも教科書で言う標準値をクリヤーしなければなりません。

 

 さて、財務分析を行うためには、再度、貸借対照表損益計算書の構造を押さえておく必要があります。

 貸借対照表は、期末日現在の財政状態を表し、資産=負債+資本で構成されています。

 

 また、損益計算書は、一年間の経営成績を表し、利益+費用=収益、売上高―売上原価=売上総利益―販売費及び一般管理費=営業利益+営業外収益―営業外費用=経常利益±特別損益=税引き前当期利益―法人税住民税等=税引き後当期利益といった構造になっていました。

 

 資産はすぐ処分できる流動性の高い(現預金はもとより)売掛金や棚卸し資産等の流動資産や、建物や機械、車両、土地等の有形固定資産や、投資その他の資産に区分できます。

 

 負債も同様にすぐ返済しなければならない、買掛金や未払金、預り金、短期借入金等の流動負債と、それ以外の長期未払金や長期借入金、退職給付などの固定負債に区分されます。

 

 1年以内で回収できるか、処分できるか、返済するかにより流動と固定に区分していることを理解してもらえれば、イメージをつかめます。

 

 細かい勘定科目は少しずつ理解してもらえればと思います。ちなみに、売掛金は掛け売りを行ったあとの債権であり、買掛金は掛け買いのときの債務です。これ付けにしておいてね、のようなイメージです。

 

 勘定科目については、随時お話ししますので、今は、貸借対照表であれば資産=負債+資本、すなわち他人や自分がしきんを調達して、資産として運用する活動を表している、という原則を思い出してくださいね。

 

 財務分析は、主として安全性、収益性や生産性、成長性というたった4つの領域で行います。

 これらは、文字通りの意味なので覚えやすいので、覚えちゃいましょう。

 

 安全性は、企業の支払い能力をみたり、どのような性質の資金により固定資産が取得されているのかをみるものです。

 主に、流動比率、固定比率、長期適合比率があります。

 

 また収益性は企業が利益を生み出す力をみるものです。主には、売上高利益率、総資産利益率自己資本利益率があります。

 

 生産性分析は、企業の生み出した付加価値をみるものです。主に労働分配率や付加価値があります。

 

 また、成長率は、前回の状況からの変化率で売上高成長率があげられます。

 

 結構ありますが、財務分析はここにあげたものを覚えれば、それで、ほぼ終わりなので、一つひとつ説明しますね。

 

 流動比率流動資産÷流動負債×100(%) 200%を超えることが望ましい(流動資産のなかには回収や処分がすぐにできない売掛金や棚卸し資産があるから)。返さなければならない負債の原資が2倍以上あれば、取り敢えず安全な企業と見られる、ということですね。

 

 固定比率=固定資産÷自己資本×100(%) 100%を切る

 

 長期適合比率=固定資産÷(自己資本固定負債)×100(%)100%を切る

 

 売上高経常利益率=経常利益÷売上高×100(%) 業種により異なるが、5%以上

 

 総資産利益率当期純利益÷     総資産(負債+自己資本)×100(%)5%が優良企業の目安

 

 自己資本利益率自己資本÷総資産(負債+自己資本)×100(%)20%以上、40%以上優良

 

 付加価値=売上高―外部業者に支払う費用(小売業・卸売業は売上原価、製造業は製造原価で材料費・外注費等、サービス業では外注費)

 

 労働分配率=人件費÷付加価値×100(%)50%以下が適切

 

 売上高成長率=(当期売上高―前期売上高)÷前期売上高×100(%)業種によりそれぞれだが5%迄が安定水準で、それ以上は優良企業

 

 これらは、何回も具体的な数字を使い、計算を繰り返すことで理解していきますので、今回はこんな程度にしておきますね。

 

 さて、上記をマイ会計でみてみましょう。

自分の資産が現預金、有価証券、車や自宅があり、友達から借りた借入金や、車のローン、自宅のローンがあるとして、今あるお金で友達の借入金は返せるのか、をみるのは流動比率です。

 

 手元の現預金<友達からの借入であれば安心ですよね。

 

 自分の親からもらった資金が資本金だとすれば、資本金と長期のローンの範囲内で自宅をもっているかどうかをみるのが長期適合比率となります。

 

 自宅<親からもらったお金と長期のローンであればOKですが、自宅>親からもらったお金と長期のローンとなると、ローン以外に普段の稼いでいる資金をつぎ込まないと自宅を維持できなくなることを意味しており、結構やばい資金繰りになると想定されます。

 

 なお、給与の伸び率は成長率で測定できますし(リアルな会計では、借入金の元本の処理の仕方が異なりますが、簡素化すれば)ローンを払ったあと貯金できる金額(個人の利益)を、もらっている給与で除すと売上高経常利益率を出すことができます。

 

 で、労働分配率はお小遣い÷給与とすると、10%もいかないですよね。厳しい!という感じで、財務分析は細かいところまでいくと、さらにいくつかの視点がありますが、大まかには財務分析は、上記のレベルで覚えておくことで初期は良いと思います。

 

 ところで、財務分析は業種の特性や経営者の政策により、何がよいのか、よくないのかについての判断も異なることがあり、

 

 なので、おおよその捉え方をするし、しかし、いつも気にかけながら、この範囲にしてくださいね、という領域に自社の経営を誘導していくことが必要になります。

 

 なので、財務分析は分析して終わりではなく、じゃあどうするのかという解決策を考え行動することで、誰がみても大丈夫というところにもっていければよいですね。

 

 最後に、じゃあどうするのかのエピソードを一つお話しします。

 

 ある企業は、ある事業を行うにあたり、グループ会社で資金調達を行い、転貸により自社に資金を入れていました。

 

 設備投資による影響もあり利益もでていないので、結果、自己資本比率が5%未満と低く、この会社自体に対して単体では銀行からは低い評価でみられていました。

 

 前期にはグループ会社への不動産の譲渡により損がでて、債務超過(負債が資産を超える状態)になっていました(税務的には色々ありますが、ここでは説明しません)。

 

 では、実際にこの企業がやばいかというと、

(1)グループ会社に資金は潤沢でいつでも支援する体制がある

(2)この会社の利益はないけれど、利益がない理由が減価償却費(固定資産を費用化するときの勘定科目→詳しく説明しますね)でありキャッシュはあった

という状況にあり、問題はありませんでした。

 

 銀行も結局はそれをわかって付き合いをしてくれていたのです。政策的にいまは資金がないし、安全性分析も結果はよくないが、背景にグループ会社があるので、大丈夫、ということなのです。

 

 財務分析は個別の事情があり、分析結果の背景をよく理解して判断することが必要という結論です。

 

 ただ、原則は、できるだけ数値を改善するための活動を種々行い、財務内容の優良化を図ることが必要であることは間違いありません。

 

 ちなみに、この会社は後にオーナーが増資を行い、債務超過を解消、事業で利益も出てきてグループからの借入を順次解消、の戦略で、財務分析の結果もよくなってきたという落ちはあります。

 

 今回の記事で(私からみて)説明不足だろう、分からないだろう、疑問がありそうだということについてピックアップし、その項目について、次回以降の記事で説明していきますので、見逃さないようにして下さいね。

 

 今回財務分析を終了して、13の黄金フレームワークのうち、7つ迄が終りました。

 

 次回は黄金のフレームワーク8番目、損益分岐点分析をお話しします。損も益もでない売上高を意味するBEP(break even point)を使い、様々な分析を行います。結構面白いかもです。お楽しみにー。