損益分岐点分析(CVP分析=Cost、Volume、Profit)という手法があります。自社の事業において、損も利益もでない売上高(利益0の売上高)BEP(break even point)はいくらかを算出します。
結果、実際の売上高と比較し、実際の売上高>BEPであれば、どれくらい余裕があるのか、また、実際の売上高<BEPであれば、いくら売上を上げれば分岐点に到達するのかを知ることができます。
さらに、必要利益を上げるために、いくらの売上高を上げればよいのか、後に説明する変動費や固定費を変化させることで、必要利益を得るための売上高のシミュレーションを行います。
損益分岐点分析を行うためには、損益計算書を使います。売上高―売上原価=売上総利益―販売費及び一般管理費=営業利益という構成になっていたのを思い出して下さい。
売上原価や販売費及び一般管理費は費用であり、収益―費用=利益という構図になっているのは、理解できますよね。ところで、ここでいう費用は、売上高の増加に応じて発生する変動費と、売上高の増減に影響を受けない固定費に区別されます。
例えば、小売業では、売上があがれば売上原価が変動費になります。売上は商品の販売であり、売上と売上原価は比例関係にあります。
ネット販売のためのアフィリエイトも変動広告費、フルコミッションの販売員の販売手数料も変動費ですね。しかし、雇用している正社員やパートの給料は、売上高の変化に応じて変化しない性格の費用で固定費です。
家賃や水道光熱費(厳密にいうと例えば電気料は活動が0でも一定額が発生し、同時に活動の増加に応じて比例的に増加する費用であり、準変動費といいますが、実務的には固定費に分類しています)や、他の大半の費用も大半が売上高に比例して発生するわけではなく、固定費です。
費用のなかから、収益の変化に影響を受ける変動費を抜き出さないと、損益分岐点の計算や、いくらの売上高であれば費用がいくら発生するというシミュレーションができません。
どの業種も先ず費用から変動費を見つけ、それ以外はすべて固定費として処理します。以外と慣れれば簡単ですよ。
さて、売上高と費用が連動していれば、売上高いくらのとき、費用がいくらという比例関係が生まれ、シミュレーションができます。
そこで、損益分岐点分析では、売上高―変動費=限界利益という考え方で比例関係をつくったのち、固定費を控除して営業利益という式を考えました。
売上高―変動費=限界利益―固定費=営業利益と損益計算書を読み替えて、シミュレーションがうまくできるようにしています。
従来の損益計算書では、損益分岐点分析ができない理由の深い検証は別の記事で行います。
今は、損益分岐点分析を行うためには、費用を変動費と固定費に区分して対応する、と覚えておいてください。
さて、費用を変動費と固定費に区分した計算の方法を直接原価計算といいます(従来の変動費と固定費を区分しない方法は、全部原価計算です)。
直接原価計算を行う場合の、損益計算書の構造は、売上高―変動費=限界利益―固定費=営業利益、というように変化すると説明しました。
売上高100のとき、変動費が30、限界利益70、固定費が60とすれば、営業利益は10となります。変動比率30%(30÷100)、限界利益率70%(70÷100)となります。
このときの損益分岐点売上はいくらでしょう。損も益もでないということは営業利益0ですよね。売上高―変動費=限界利益―固定費=営業利益の式の営業利益を0として逆算してみましょう。
営業利益0=限界利益60-固定費60、ということで限界利益60と分かります。限界利益=売上高―変動費ですが、売上高100の時に限界利益70で、売上高限界利益率70%、としていますので、60を70%で除すと売上高が計算できます。
60÷70%≒86となります。これが損益分岐点の売上高です。
売上高―変動費=限界利益―固定費=営業利益に当てはめてみましょう。
売上高86―変動費(86×30%)26=限界利益60―固定費60=営業利益0
となり、現状売上高100のこの会社は営業利益を10出していますが、損益分岐点売上高は86である、という結論です。
変動比率と限界利益率を計算し、式に当てはめると、損益分岐点は簡単に出ることが分かりました。
それでは、利益を20欲しいときの売上高はいくらでしょうか。これも先ほどの式から簡単に出せます。逆算してみましょう。
営業利益20=限界利益80-固定費60、ということで限界利益が80必要と分かります。限界利益=売上高―変動費ですが、売上高100の時に限界利益70で、売上高限界利益率70%、としていますので、限界利益80を70%で除すと売上高が計算できます。
80÷70%≒114となります。これが営業利益20を出すときの売上高です。
売上高―変動費=限界利益―固定費=営業利益に当てはめてみましょう。
売上高114―変動費(114×30%)34=限界利益80―固定費60=営業利益20となり、現状売上高114のこの会社は営業利益を20出を出すことができます。この会社が20の利益を出したいときの売上高は114である、という結論です。
もうお分かりと思いますが、損益分岐点分析は欲しい利益をシミュレーションすることができる、短期利益計画の立案に役立つ、ということです。これ結構大事なので忘れないでくださいね。
なお、損益分岐点図という図を使うと売上高、固定費、変動費、損益分岐点が明確に目で理解できますが、図がなくても、考え方を覚えれば簡単です。
損益分岐点を出す正しい方程式は、固定費÷(1-[変動費/売上高])であり、先ほどの会社であれば、60÷(1-0.3)=86となります。また、20の利益が欲しいときには、(営業利益+固定費)÷(1-[変動費/売上高])であり、(20+60)÷(1-0.3)=114が営業利益20を出すときの利益になります。
固定費を削減したり、変動比率を削減することで、損益分岐点売上高は低くなりますので、損益分岐点を下げるためには、固定費のコストカットを行ったり、変動費となる仕入れコストを下げる対応を行います。
マイ会計でいえば、自分の損益分岐点はどこかを給与をベースに出してみる、という事だと思います。
日々の生活で家賃や水道光熱費、通信費といった固定費や、自分にとり、遊興費や食費といった変動費(本来の定義とは異なりますが)っぽいものを分類し、どこまでなら給与が下がっても生活できる水準を出す、といったことです。
貯金をいくら残したい、ということで簡便に必要収入を計算することもできます。
損益分岐点分析は、もっと多様なことが把握できる分析手法なので、別の機会により詳しく話しますが、先ずはこの辺を押さえておくとよいでしょう。
次回は再度。財務分析の情報を提供しますね。それではまた。