「マイ会計」会計をもっと身近に。世界は会計でできている[石井友二]

社会人の三種の神器は、会計、IT、英語ですが、このなかで最も重要なのは会計です。会計がいかに日々の生活に入りこんでいるのか、また日々の生活を支援するのか、明らかにしていきます。会計を知り活用すれば人生を謳歌できます。充実した人生を送るための会計についてご紹介していきます。

損益分岐点分析で、未来を切り拓く

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 損益分岐点分析(CVP分析=Cost、Volume、Profit)という手法があります。自社の事業において、損も利益もでない売上高(利益0の売上高)BEP(break even point)はいくらかを算出します。

 

 結果、実際の売上高と比較し、実際の売上高>BEPであれば、どれくらい余裕があるのか、また、実際の売上高<BEPであれば、いくら売上を上げれば分岐点に到達するのかを知ることができます。

 

 さらに、必要利益を上げるために、いくらの売上高を上げればよいのか、後に説明する変動費や固定費を変化させることで、必要利益を得るための売上高のシミュレーションを行います。

  

 損益分岐点分析を行うためには、損益計算書を使います。売上高―売上原価=売上総利益―販売費及び一般管理費=営業利益という構成になっていたのを思い出して下さい。

 

 売上原価や販売費及び一般管理費は費用であり、収益―費用=利益という構図になっているのは、理解できますよね。ところで、ここでいう費用は、売上高の増加に応じて発生する変動費と、売上高の増減に影響を受けない固定費に区別されます。

 

 例えば、小売業では、売上があがれば売上原価が変動費になります。売上は商品の販売であり、売上と売上原価は比例関係にあります。

 

 ネット販売のためのアフィリエイトも変動広告費、フルコミッションの販売員の販売手数料も変動費ですね。しかし、雇用している正社員やパートの給料は、売上高の変化に応じて変化しない性格の費用で固定費です。

 

 家賃や水道光熱費(厳密にいうと例えば電気料は活動が0でも一定額が発生し、同時に活動の増加に応じて比例的に増加する費用であり、準変動費といいますが、実務的には固定費に分類しています)や、他の大半の費用も大半が売上高に比例して発生するわけではなく、固定費です。

 

 費用のなかから、収益の変化に影響を受ける変動費を抜き出さないと、損益分岐点の計算や、いくらの売上高であれば費用がいくら発生するというシミュレーションができません。

 

 どの業種も先ず費用から変動費を見つけ、それ以外はすべて固定費として処理します。以外と慣れれば簡単ですよ。

 

 さて、売上高と費用が連動していれば、売上高いくらのとき、費用がいくらという比例関係が生まれ、シミュレーションができます。

 

 そこで、損益分岐点分析では、売上高―変動費限界利益という考え方で比例関係をつくったのち、固定費を控除して営業利益という式を考えました。

 

 売上高―変動費限界利益―固定費=営業利益と損益計算書を読み替えて、シミュレーションがうまくできるようにしています。

 

 従来の損益計算書では、損益分岐点分析ができない理由の深い検証は別の記事で行います。

 

 今は、損益分岐点分析を行うためには、費用を変動費と固定費に区分して対応する、と覚えておいてください。

 

 さて、費用を変動費と固定費に区分した計算の方法を直接原価計算といいます(従来の変動費と固定費を区分しない方法は、全部原価計算です)。

 

 直接原価計算を行う場合の、損益計算書の構造は、売上高―変動費限界利益―固定費=営業利益、というように変化すると説明しました。

 

 売上高100のとき、変動費が30、限界利益70、固定費が60とすれば、営業利益は10となります。変動比率30%(30÷100)、限界利益率70%(70÷100)となります。

 

 このときの損益分岐点売上はいくらでしょう。損も益もでないということは営業利益0ですよね。売上高―変動費限界利益―固定費=営業利益の式の営業利益を0として逆算してみましょう。

 

 営業利益0=限界利益60-固定費60、ということで限界利益60と分かります。限界利益=売上高―変動費ですが、売上高100の時に限界利益70で、売上高限界利益率70%、としていますので、60を70%で除すと売上高が計算できます。

 60÷70%≒86となります。これが損益分岐点の売上高です。

 

 売上高―変動費限界利益―固定費=営業利益に当てはめてみましょう。

 

 売上高86―変動費(86×30%)26=限界利益60―固定費60=営業利益0

となり、現状売上高100のこの会社は営業利益を10出していますが、損益分岐点売上高は86である、という結論です。

 

 変動比率と限界利益率を計算し、式に当てはめると、損益分岐点は簡単に出ることが分かりました。

 

 それでは、利益を20欲しいときの売上高はいくらでしょうか。これも先ほどの式から簡単に出せます。逆算してみましょう。

 

 営業利益20=限界利益80-固定費60、ということで限界利益が80必要と分かります。限界利益=売上高―変動費ですが、売上高100の時に限界利益70で、売上高限界利益率70%、としていますので、限界利益80を70%で除すと売上高が計算できます。

80÷70%≒114となります。これが営業利益20を出すときの売上高です。

 

 売上高―変動費限界利益―固定費=営業利益に当てはめてみましょう。

売上高114―変動費(114×30%)34=限界利益80―固定費60=営業利益20となり、現状売上高114のこの会社は営業利益を20出を出すことができます。この会社が20の利益を出したいときの売上高は114である、という結論です。

 

 もうお分かりと思いますが、損益分岐点分析は欲しい利益をシミュレーションすることができる、短期利益計画の立案に役立つ、ということです。これ結構大事なので忘れないでくださいね。

 

 なお、損益分岐点図という図を使うと売上高、固定費、変動費損益分岐点が明確に目で理解できますが、図がなくても、考え方を覚えれば簡単です。

 

 損益分岐点を出す正しい方程式は、固定費÷(1-[変動費/売上高])であり、先ほどの会社であれば、60÷(1-0.3)=86となります。また、20の利益が欲しいときには、(営業利益+固定費)÷(1-[変動費/売上高])であり、(20+60)÷(1-0.3)=114が営業利益20を出すときの利益になります。

 

 固定費を削減したり、変動比率を削減することで、損益分岐点売上高は低くなりますので、損益分岐点を下げるためには、固定費のコストカットを行ったり、変動費となる仕入れコストを下げる対応を行います。

 

 マイ会計でいえば、自分の損益分岐点はどこかを給与をベースに出してみる、という事だと思います。

 

 日々の生活で家賃や水道光熱費、通信費といった固定費や、自分にとり、遊興費や食費といった変動費(本来の定義とは異なりますが)っぽいものを分類し、どこまでなら給与が下がっても生活できる水準を出す、といったことです。

 

 貯金をいくら残したい、ということで簡便に必要収入を計算することもできます。

 

 損益分岐点分析は、もっと多様なことが把握できる分析手法なので、別の機会により詳しく話しますが、先ずはこの辺を押さえておくとよいでしょう。

 

 次回は再度。財務分析の情報を提供しますね。それではまた。

財務分析で自社を知り、前進しよう!

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 財務分析は、貸借対照表損益計算書の各勘定科目や項目を活用し、安全性、収益性や生産性、成長性を分析し、それらを作成している企業の状況を把握する方法です。

 

 業界のなかでの位置づけや、競合他社との比較を行うことで、どこが強くどこに弱みがあるか、また、強みをもっと強くしたり、弱みをどう改善すれば良いか、情報を得ることができます。

 

 なお、第三者も同じ見方で自社を評価するため、どう見てもらえるかという点からも教科書で言う標準値をクリヤーしなければなりません。

 

 さて、財務分析を行うためには、再度、貸借対照表損益計算書の構造を押さえておく必要があります。

 貸借対照表は、期末日現在の財政状態を表し、資産=負債+資本で構成されています。

 

 また、損益計算書は、一年間の経営成績を表し、利益+費用=収益、売上高―売上原価=売上総利益―販売費及び一般管理費=営業利益+営業外収益―営業外費用=経常利益±特別損益=税引き前当期利益―法人税住民税等=税引き後当期利益といった構造になっていました。

 

 資産はすぐ処分できる流動性の高い(現預金はもとより)売掛金や棚卸し資産等の流動資産や、建物や機械、車両、土地等の有形固定資産や、投資その他の資産に区分できます。

 

 負債も同様にすぐ返済しなければならない、買掛金や未払金、預り金、短期借入金等の流動負債と、それ以外の長期未払金や長期借入金、退職給付などの固定負債に区分されます。

 

 1年以内で回収できるか、処分できるか、返済するかにより流動と固定に区分していることを理解してもらえれば、イメージをつかめます。

 

 細かい勘定科目は少しずつ理解してもらえればと思います。ちなみに、売掛金は掛け売りを行ったあとの債権であり、買掛金は掛け買いのときの債務です。これ付けにしておいてね、のようなイメージです。

 

 勘定科目については、随時お話ししますので、今は、貸借対照表であれば資産=負債+資本、すなわち他人や自分がしきんを調達して、資産として運用する活動を表している、という原則を思い出してくださいね。

 

 財務分析は、主として安全性、収益性や生産性、成長性というたった4つの領域で行います。

 これらは、文字通りの意味なので覚えやすいので、覚えちゃいましょう。

 

 安全性は、企業の支払い能力をみたり、どのような性質の資金により固定資産が取得されているのかをみるものです。

 主に、流動比率、固定比率、長期適合比率があります。

 

 また収益性は企業が利益を生み出す力をみるものです。主には、売上高利益率、総資産利益率自己資本利益率があります。

 

 生産性分析は、企業の生み出した付加価値をみるものです。主に労働分配率や付加価値があります。

 

 また、成長率は、前回の状況からの変化率で売上高成長率があげられます。

 

 結構ありますが、財務分析はここにあげたものを覚えれば、それで、ほぼ終わりなので、一つひとつ説明しますね。

 

 流動比率流動資産÷流動負債×100(%) 200%を超えることが望ましい(流動資産のなかには回収や処分がすぐにできない売掛金や棚卸し資産があるから)。返さなければならない負債の原資が2倍以上あれば、取り敢えず安全な企業と見られる、ということですね。

 

 固定比率=固定資産÷自己資本×100(%) 100%を切る

 

 長期適合比率=固定資産÷(自己資本固定負債)×100(%)100%を切る

 

 売上高経常利益率=経常利益÷売上高×100(%) 業種により異なるが、5%以上

 

 総資産利益率当期純利益÷     総資産(負債+自己資本)×100(%)5%が優良企業の目安

 

 自己資本利益率自己資本÷総資産(負債+自己資本)×100(%)20%以上、40%以上優良

 

 付加価値=売上高―外部業者に支払う費用(小売業・卸売業は売上原価、製造業は製造原価で材料費・外注費等、サービス業では外注費)

 

 労働分配率=人件費÷付加価値×100(%)50%以下が適切

 

 売上高成長率=(当期売上高―前期売上高)÷前期売上高×100(%)業種によりそれぞれだが5%迄が安定水準で、それ以上は優良企業

 

 これらは、何回も具体的な数字を使い、計算を繰り返すことで理解していきますので、今回はこんな程度にしておきますね。

 

 さて、上記をマイ会計でみてみましょう。

自分の資産が現預金、有価証券、車や自宅があり、友達から借りた借入金や、車のローン、自宅のローンがあるとして、今あるお金で友達の借入金は返せるのか、をみるのは流動比率です。

 

 手元の現預金<友達からの借入であれば安心ですよね。

 

 自分の親からもらった資金が資本金だとすれば、資本金と長期のローンの範囲内で自宅をもっているかどうかをみるのが長期適合比率となります。

 

 自宅<親からもらったお金と長期のローンであればOKですが、自宅>親からもらったお金と長期のローンとなると、ローン以外に普段の稼いでいる資金をつぎ込まないと自宅を維持できなくなることを意味しており、結構やばい資金繰りになると想定されます。

 

 なお、給与の伸び率は成長率で測定できますし(リアルな会計では、借入金の元本の処理の仕方が異なりますが、簡素化すれば)ローンを払ったあと貯金できる金額(個人の利益)を、もらっている給与で除すと売上高経常利益率を出すことができます。

 

 で、労働分配率はお小遣い÷給与とすると、10%もいかないですよね。厳しい!という感じで、財務分析は細かいところまでいくと、さらにいくつかの視点がありますが、大まかには財務分析は、上記のレベルで覚えておくことで初期は良いと思います。

 

 ところで、財務分析は業種の特性や経営者の政策により、何がよいのか、よくないのかについての判断も異なることがあり、

 

 なので、おおよその捉え方をするし、しかし、いつも気にかけながら、この範囲にしてくださいね、という領域に自社の経営を誘導していくことが必要になります。

 

 なので、財務分析は分析して終わりではなく、じゃあどうするのかという解決策を考え行動することで、誰がみても大丈夫というところにもっていければよいですね。

 

 最後に、じゃあどうするのかのエピソードを一つお話しします。

 

 ある企業は、ある事業を行うにあたり、グループ会社で資金調達を行い、転貸により自社に資金を入れていました。

 

 設備投資による影響もあり利益もでていないので、結果、自己資本比率が5%未満と低く、この会社自体に対して単体では銀行からは低い評価でみられていました。

 

 前期にはグループ会社への不動産の譲渡により損がでて、債務超過(負債が資産を超える状態)になっていました(税務的には色々ありますが、ここでは説明しません)。

 

 では、実際にこの企業がやばいかというと、

(1)グループ会社に資金は潤沢でいつでも支援する体制がある

(2)この会社の利益はないけれど、利益がない理由が減価償却費(固定資産を費用化するときの勘定科目→詳しく説明しますね)でありキャッシュはあった

という状況にあり、問題はありませんでした。

 

 銀行も結局はそれをわかって付き合いをしてくれていたのです。政策的にいまは資金がないし、安全性分析も結果はよくないが、背景にグループ会社があるので、大丈夫、ということなのです。

 

 財務分析は個別の事情があり、分析結果の背景をよく理解して判断することが必要という結論です。

 

 ただ、原則は、できるだけ数値を改善するための活動を種々行い、財務内容の優良化を図ることが必要であることは間違いありません。

 

 ちなみに、この会社は後にオーナーが増資を行い、債務超過を解消、事業で利益も出てきてグループからの借入を順次解消、の戦略で、財務分析の結果もよくなってきたという落ちはあります。

 

 今回の記事で(私からみて)説明不足だろう、分からないだろう、疑問がありそうだということについてピックアップし、その項目について、次回以降の記事で説明していきますので、見逃さないようにして下さいね。

 

 今回財務分析を終了して、13の黄金フレームワークのうち、7つ迄が終りました。

 

 次回は黄金のフレームワーク8番目、損益分岐点分析をお話しします。損も益もでない売上高を意味するBEP(break even point)を使い、様々な分析を行います。結構面白いかもです。お楽しみにー。

 

 

 

 

 

予算実績管理で、目指すところに上がる

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 予算実績管理は、予算すなわち収入や支出の計画と実績を比較し、その差額を分析すること。そして差額をなくす解決策を考え(これが難しく、予実をうまく行う肝になりますが)、行動を修正することで、常に予算に近づき、予算達成を行うことを目的として行われる活動です。

 

 ここでは、予算、すなわち事業計画や行動計画が予め設定されていることを前提とし、予算と実績を比較し行動修正を行うことについての説明をします。

 

 ところで、予算を記載した書類である予算書のない事業に意味がないかといえば、意味があります。予算書がないからと言って経営者に経営目標がないということではなく、少なくとも今期はここまでもっていきたい、今月はここまでやりたいという思いをもって経営者は経営を行うことが通常だからです。

 

 頭のなかや手帳でその目標を設定し、自らが成果を挙げようとして行動するのは、小さい組織の行動であり特権です。しかし、一定規模があるときに、組織全体を動かし、合理的に成果を挙げようとするのであれば、予算書がなければ、組織構成員の行動が目的に合ったものになりません。

 

 「一生懸命やること」が免罪符になり、(そもそも曖昧な)決めた成果に到達しないことが多くあります。

 

 目標は、中期経営計画により3年、年度経営計画により1年、月次決算に併せて行われる1ヶ月ごとの予実管理で達成される、と理解して下さい。

 

 ここでの予算は月次で管理する指標や会計科目に合わせて設定され、毎月比較により差額分析が行われます。

 

 売上高、売上原価、売上総利益、販売費及び一般管理費、営業利益までが、現場レベルの管理対象です。営業利益後の、営業外収益や営業外費用は、以前説明したように、財務損益の対象であり、経営層が確認すべき領域です。

 

 現場の行動が成果に現れるのは営業利益迄であり、これらのうち管理可能な領域についての損益を、各部署が自部署の予算に落とし込み、実績との比較を行い成果を挙げます。

 

なお、部署にはプロフィットセンター[収益を得る部門]コストセンター[収益を得られずコストのみ発生する部門]に区分されます。コストセンターも活動の予算のなかに行動指標を盛り込み、例えば費用予算や行動目標が設定されるため、収益がないから予算がないわけではありません)

 

 ここで、自部署の予算に落とし込みという言い方は、ある意味逆です。

 

 予算がつくられる段階では、経営トップから予算編成の方針が出された後、各部署で自部署の業績を考え、上記の領域で予算をつくり、その集積された全社予算と方針との差額を調整しながら自部署の予算が決定され、目標化されます。

 

 もともと全社予算ができて、自部署の予算に落ちるという印象もありますが、最終的には部署別に設定した予算が全社予算を構成するということの認識が強いと思います。

 

 さて、最終的には自分達が決めたんだよね、という予算感を現場が持つケースが能動性を喚起するのはいうまでもありません。押し付けられた予算はどこかで忌避される可能性があります。

 

 とはいうものの、実務上は、予算編成の段階で、一定の裁量はあるけれど、結局はこの数字をつくりましょう、という天の声があるので、最終的にやる気になるかどうかは、働く人のモチベーションにかかっています。

 

 なので、成果を挙げるためには、ただ予実管理があればよいのではなく、経営全般にわたるマネジメントが必要なのはいうまでもありません。

 

モチベーションの背景はさまざまですが、本人のやりたいことと、会社の方向が一致し、役割を明確にしたうえで目標達成を約束(コミットメント)し、本人の活動を支援する仕組み(コミットメントサイクル)が必要です。

 

話がそれましたが、指標や勘定科目別に予算が決まり、その予算と実績を比較するのが、予算実績管理です。予算と実績を管理するときに不可欠なのが指標です。財務会計の勘定科目の比較だけでは大まかなことしか分からないからです。

 

予算は指標ベースでも行われる必要があります(これを先行指標と言います)。予算実績管理は先行指標と実績指標の比較で行われると言っても過言ではありません。

 

ここで、指標にはさまざまあり、業種や部署により異なります。

 

営業部であれば、損益予算以外に、訪問件数や有効面談回数、面談時間、新規顧客数、顧客一件当り粗利等の指標目標が設定され、実績と比較されます。指標はとても大事です。

 

実際には、損益項目のみを比較して差額を出しても予算と実績の乖離を生む原因を発見できないことが多いからです。

 

指標設定により、詳細な分析をエリア別、商品種別、人別、期間別等々の情報も加味しながら分析し、予算未達、あるいは予算を超えた要因を分析していくのです。

 

予算実績管理は指標管理と並行して行うことが有効なんですね。というか指標は前述のように予算の一つであるとしたほうが自然だと思います。

 

予算実績管理っぽいことをしているけれど、要因分析を本格的に行わず、ただ差額を出し、定性的な理由をつけお茶を濁しているだけの企業も多くあります。

 

差額の要因が曖昧だと解決策も曖昧になり、行動も窓が外れたものになります。もったいないですね。

 

なお、指標の設定には教科書的なものもありますが、損益に感度が高い指標を見つけ、その指標を管理し続ける仕組みが必要です。

 

どこかで指標管理を、より詳細に触れますが、大事なポイントです。

 

世の中ではKPI(重要管理指標)といういいかたで、指標を表していますが、パフォーマンス(成果)の鍵となる指標として役に立つかどうかは、使い方次第、ということになりますね。

 

繰り返しになりますが、予実により差額の要因分析→要因の改善、継続に向けた行動をとる、というところに進んで始めて、本当の予実管理になることを忘れないようにしましょう。

 

到達点と現状の乖離を発見し、要因分析、解決策策定の計画化、PDCAサイクルに乗せた行動、というながれをつくれるかどうかが大切です。

 

予算実績管理の巧拙は組織運営に大きく影響しますので、留意が必要です。

 

これまで予実の概要を説明しました。

これからも何回か、さらに詳細に説明しますので、予実の概要をつかんでくださいね。

 

次は、いったん財務三表に戻り、財務分析(経営分析)について話します。

 

 

 

 

 

月次決算を蔑ろにすると、大変なことになりますよ

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 月次決算は、経営上有用な情報を提供するために、毎月行われる月単位の経営成績や財政状態を明らかにするために行われる決算のことです。管理会計の領域にあります。

まず、日々の会計処理により、毎月試算表が作成されます。

 

今日は書籍を購入したので図書費、接待をしたので交際費、電気代や水道代を支払い光熱費、給与の支給で人件費、安いパソコンは消耗品、出張に行き交通費等々、現金で払ったり、未払いや掛けだったり、会計上、支払いの形態や処理は多様です。

 

これら日々の取引が集計された計算書が試算表なのです。

ここで試算表とは、決算書類を作成する前段階のデータをいいます。で、試算表は、T/B(Trial Balance)といいます。なんとなく試しにつくりました、といったニュアンスですよね。試算表は、貸借対照表損益計算書が合算した形になっています。

 

まだ説明していませんが、貸借対照表の当期利益=損益計算書の利益、になようになっているので、試算表は、資産+費用=負債+資本+収益というかたちになってます。

 

貸借対照表の構造、資産=負債+新資本(旧資本+利益)と、損益計算書の構造、利益+費用=収益を合算すると、資産+利益+費用=負債+旧資本+利益+収益となります。

 

利益を両方から消すと(相殺すると)資産+費用=負債+旧資本+収益となるのです。

旧資本は期首の資本であり、一年かけて経営した結果利益が生まれ、シンプルにいえば、貸借対照表上では、その利益は資本金に積上げられることになっているのです。

 

期首の貸借対照表の旧資本金に、損益計算書で表示された一年間の経営により得られた利益(収益―費用)を積み上げ、期末の新資本金が計算されるという仕組みです。

 

この考え方については、少し難しいかもしれないので、どこかでまた説明しますね。

ということで、試算表を分割して、月次の貸借対照表損益計算書を作成することで、月次決算が行われます。

 

一年間経過してはじめて、会社の財政状態や経営成績の情報を得たのでは、計画通りに経営ができているのかが分かりません。

 

なので、毎月試算表を作成し、月次での情報を得ながら、うむふむ、予定通りだな、とか、全然うまくいっていないじゃないか、のような判断を行います。

 

うまくいっていればうまくいった通りに翌月も行動すれば、うまくいくのを継続できるし、うまくいっていないのであれば原因分析し、対策を立てPDCA(計画→行動→チェック→修正行動)サイクルを回せば、翌月から失敗することが少なくなります。

月末を過ぎたら、月次決算は迅速、かつ正確に行う必要があります。

 

 多くの組織で、それを怠り、計算し易い収益のみみて判断する活動をしているケースが見受けられます。

 

 収益すら正確に掴んでいない、大まかに把握しているだけ、勘に頼っている、といったことでは、利益やキャッシュのながれが分らず、後に大きなミスを犯すことになります。

 月次決算はとても大切です。利益を上げるモデルをつくったのちにはできるだけ早期に仕組みをつくり月次決算を迅速、正確に行えるよう取り組むことが経営管理のスタートです。

 

次回以降話す予算実績管理においても、いくら予算を編成(予算を立てる)しても実績が分らなければ統制もとれません(管理もできません)。

 

 現場での処理、組織の協力、会計の仕組み、個人の能力向上、IOTやAI等の活用が解決策になります。月次決算を活用し、会社経営の科学的(体系的、継続的)管理を行う必要があります。

 

ということで、会計情報、その背景にある組織運営の情報を掌握し、外部情報と併せて的確な判断を行い、柔軟に活動できる環境づくりを行うための月次決算について説明しました。

 

 なお、翌月15日には月次決算を行い、分析検討を1日から2日で行い、修正行動を行うことが標準としたいですが、半数以上は1ヶ月、2ヶ月経って月次が終る、といったことになっています。

 

欲をいえば10日に月次決算を終わらせるようにできると、業績はうなぎのぼりです。

 

 マイ会計でも、月次決算の応用ができます。自分の行動を毎月見直し、1ヶ月間どうだったのか、何ができて何ができなかったのかを振り返り、翌月から修正行動をとる事が、人生うまくいくための要諦です。

 

 月次決算の、大まかな意義を理解し、月次で自分を把握する。そして、振り返る、計画との乖離を意識する、原因を分析する、行動するというながれができるよう、予算実績管理について、次回話をしますね。

財務三表と製造原価報告書は、家族のようなものだった?

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 貸借対照表B/SBalance sheet)、損益計算書P/Lprofit and loss statement)、そして、キャッシュフロー計算書はC/Fcash flow statement)といいます。また、製造原価報告書はC/RCost Report)といいます。

 マイ会計では、この4者を家族と呼ぶことがあります(って、世界で初めて私がそう言っているだけなので、ネットで検索しても出てきません…)。

 

ある家の場合には、お母さんがB /Sです。お金を握り、一切の切り盛りをしています。家の隅々まで細かく知っているし、近所との付き合いや親戚(利害関係者)との付き合いを仕切り、財産はいつかは、結局私のもの、といった気持ちでいます。

 

悪い意味ではなく、家計がしっかりして、知らない間に資産が増えているのもお母さんの実力かもしれません。

 

資産=負債+資本における、負債についてはお父さん名義にしていることが多いですが、場合によれば自分もパートに出て、お父さんのサポートもしたりします。

 

家族の場合、貸借対照表の資本は、お母さんが結婚のときに持ってきた貯金や、嫁入り道具の家具や家電商品だったりします。

 

お父さんは言わずと知れた損益計算書P /L。一生懸命給料を稼ぎ、収益を上げます。使える費用は、家族によってたかって使われた残りのお小遣い。交通費や飲食費、小さな交際費のようなものです。

 

収益―費用=利益については、結局貸借対照表に吸い上げられ、毎年一年間の経営成績を求められています。かわいそー。

 

で、お姉さんがキャッシュフロー計算書C /F。いつもお母さんの見方で、お父さんを目下に見ています。ていうか、お母さんの姿勢次第ですね。お父さんのお母さんに対する愛情(愛憎=愛憎相半ばするではなく愛情です)が結局はお姉さんの性格を決めます。

 

お父さんがお母さんを愛していれば、お母さんも冗費(無駄なお金)を使わない、無駄な経費もなくなるし、へそくり(会計では不正の一種です…)もしませんからお金も貯まるみたいな。で、お姉さんは、働いていても、家事手伝いでも、お母さんの相談相手なので侮れないです。

 

お父さんはある時期から疎んじられ、大事にされなくなりますが、お母さんもコントロールして、お金の使い道に口を出したり、思い通りのお小遣いをせしめたりするのがお姉さん。

 

お父さんは、お姉さんも甘やかすことなく育てないと、後で後悔することになります。お金の使い道をお母さんとお姉さんに握られないこと。大事ですね。

 

お兄さんは、製造原価報告書C /Rです。お父さんが働いている糧はお兄さんです。お父さんが頑張って稼げるのも、息子が一人前になり、俺を支えてくれたらいいと思っている節があります。

 

結局、期待に応えるため一生懸命勉強し、コストをかけてお父さんのサポートをしています。

 

ときには頑張って優秀な成績を挙げ、褒められることは、お父さんばかりか、お母さんの喜びでもあり、お母さんの大事な心の宝物(資産)になったりします(ちなみにリアルな会計では、人や心に残る思い出、第三者からの評価は資産に計上されませんが、マイ会計では皆資産です。この違いを理解していると、マイ会計とリアル会計の間を容易に行き来できますよ)。

 

ここで家族を眺めている読者が、弟である株主。やはりまずはマイ会計を学習し、会計に近づきたいと思っているあなたが主役なんですね。

 

上記のように、B/Sはバランスのとれたお母さん(決してBuSuなお母さんではありません)、P/Lはプライドはあるけど軽んじられているお父さん、そしてC/Fはお金の影のアドバイザーであるクリヤーでファッショナブルな(結構苦しくなってきました…)、お姉さんと置き換えると、会計に親しみが湧いてくると思います。

 

もちろん、頑張って、お姉さんはともかく、親の将来を支えているのは、製造原価報告書のC/Rだけに、頭がよく(clever)で理にかなった(reasonable)お兄さんです。

 

科学的な管理を行い(マイ会計では教育)、生産性を挙げ、力をつけて誰にもまけない人になるため(価値のある資産をつくるため)、日夜頑張ってもらうため、お父さんは頑張るし、お母さんはお兄さんに投資をして期待している姿が目に浮かびます。

 

という家族を例にあげていますが、マイ会計においては、自分の現状や周りにある事例を、創造力豊かに思い浮かべ、会計を超感じて欲しいと思います。

 

なので、B/Sがお父さんの家庭もあるし、実は仕事から引退して、C/Fなお父さんもいるかもしれません。自分が理解して、会計を肌身につけていくときのイメージづくりに使ってもらえれば嬉しいです。

 

なお、B/SP/LC/FC/Rの本当の読み方は覚えておいてくださいね。

 

C/F、あー、クリヤーでファッショナブルな計算書ね」、みたいなことにならないようにしましょう。

 

ということで、マイ会計の意味を少し理解していただけたら幸いです。まだまだ続きます。まだ会計の登山口に差し掛かったところですが、ゆっくりと、道を究めながら、山を登っていくことにします。

 

 

財務三表と製造原価報告書のフレームワークを復習しましょう

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 貸借対照表損益計算書、そしてキャッシュフロー計算書の財務三表は、密接なつながりがあることは説明しました。

 

 資産=負債+資本の構造をもつ貸借対照表は、他人からの調達(他人資本)と自分の調達(自己資本)により、資産を運用することを表す財務諸表であることを再度覚えましょう。

 

 この公式通りに、左側を資産、右側を負債+資本と確認して下さい。これはルールなので、決まり事です。右手、といわれて左手を出す人はいませんよね。右はこちら、左はこっちと、小さいときから自然に身に着けたのであり、なぜ右なんだ、と考えても埒があきません。

 

 1494年にルカパチョーリが数学書ズムマのなかで、複式簿記(=いわゆる簿記)を考えたと既に説明していますが、そこで、貸借対照表は、資産=負債+資本となるように決まっています。

 

 また、同様に損益計算書も、収益―費用=利益という従来説明してきた公式と、費用+利益=収益という公式があり、これもルールなので覚える必要があります。

 

 損益計算書は、まさに、「一年間に得た収入から支出を控除して残りが利益(経営成績)」という、分かりやすい構造になっていて、こちらのほうが身近だと思います。収益と収入、費用と支出は厳密にいうと意味が異なりますが、ここではスルーして同じとしてよいです。

 

 さて、貸借対照表の資産としての現金(現預金)の期首(一年のスタートの日)から期末日(一年の最期の日)までの動きを営業、投資、財務の3つの源泉に区分して示す表がキャッシュフロー計算書でした。

 

 営業キャッシュで現金が減るのは、商品などの在庫を増やしたためとか、売掛金が増えたため(回収できなかった)ためとか、買掛金を払ったために現金が減ったなどの理由が示されますし、投資キャッシュで現金が減るのは、設備投資をしたからとか、株式投資をしたからということが示されます。

 

 そして財務キャッシュでお金が減ったのは、借入金の元本を返済したから、のようにさらに理由が示され、最初これだけあった現金は、こんな理由により減ったんだな、と分かる枠組みになっているのです。

 

 もちろん、増えるときにも理由があり、営業キャッシュでは増え、投資キャッシュで減り、財務キャッシュで増えるなど、増減の表示がされるようになっています。

 

 で、製造原価報告書は、製造を行っている企業が製品をつくり、販売するときに作成する計算書でした。

 

 損益計算書上で、収益である売上高の費用となる売上原価はいくらかと計算するとき、製品をつくるために工場で使った材料費や加工費、労務費や経費を計算する財務諸表の一部です。

 

 在庫が残れば、貸借対照表に、製品や仕掛品、部品や原材料として掲載し、情報を提供すると説明しています。

 

 ということで、製造業では、財務三表と製造原価報告書は一体となって使われることが分かります(それ以外の業者では製造原価報告書は使いませんので財務三票だけですが、関係は分かっていただけましたか?)。

 

 このブログを何度か読んでみると覚えやすと思いますが、ルカパチョーリさんのところで述べたように覚えなければならないことは、マイ会計で何度も手を変え品を変え理解できるようにしていきますので、安心して下さいね。

 

 なお、マイ会計において簿記の考えは必要ない、というのは偽りのない真実ですが、一つだけ知っておくとハナタカ(鼻が高い)なことがあります。

 

 簿記では、左のことを借方、右のことを貸方といいます。

 「かりかた」「かしかた」に覚え方のヒントがあります。左は借方ですが、「かり」の「り」が左に向いていますよね。なので、借方は左を意味して、同じように右は貸方ですが、「かし」の「し」が右を向いていることで、覚えやすくなります。

 

 私は19歳の大学入学前(一浪です…しくしく)に水道橋の簿記学校に通っていましたが(残念な事に大学が楽しくて、4月半ばで止めちゃいました…)、この話を聞いて、妙に納得して覚えた記憶があります。

 

 英語では借方(debit)、貸方(credit)といいますが、福沢諭吉が訳したそうです。

 

 もともとは、debitはお金を借りる人、creditはお金を貸す人らしいですが、やっぱり意味不明なので、「かり」「かし」で覚えています。

 

 なお、貸借対照表でも、損益計算書でも、左側は借方、右側は貸方なので、例えば、貸借対照表の借方には資産があり、貸方には負債と資本がある、という表現を使います。これ、フェーズを上げていくときに大切なので。やはり覚えておきましょうね。

 

 

 

 ということで、次回は、財務三表と製造原価報告書は実は、家族のような関係だったという話をします。

 

 

 

 

 

工場で使う、製造原価報告書って何?

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 前回は、貸借対照表損益計算書キャッシュフロー計算書の財務三表の説明をしました。

 

 貸借対照表は、資産=負債+資本、損益計算書は、収益―費用=利益という構造だし、キャッシュフォー計算書は、現金(現預金)の増減を、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローに区分して、期首の現金が期末にどうなったのかを表示する仕組みになっていると説明しています。

 

 

 今日は、これら財務三表に関連する製造原価報告書について説明します。

 

 製造原価報告書とは、文字通り製造の原価を報告する計算書のことをいいます。

 製造(原材料に手を加えて製品をつくること)することについて、例えばペットボトルをつくる工場があったとします。

 

 工場では、ペットボトルの原料(樹脂ペレット=米粒状の樹脂)を仕入れ、それを射出成型機(何かを吐き出す感じの名前ですよね)という機械に金型(粘土の陶器で作った型抜きのようなもの)を装着し、樹脂を流しこんで熱をかけ、金型に流し込んでペットボトルの原型であるプリフォームというものをつくります。

 

 それを冷却して取り出し、さらに加熱し別の金型に流し込み、筒を使って空気を入れ膨らませ、ペットボトルをつくります(二軸延伸ブロー成形法)。

 

 ブローって風を送り込むやり方です。美容院でも使いますね。

 

 で、工場では、例えは、サランラップも簡単に言えば、同じように樹脂を溶かして、風で広げながら冷やして巻き取っていくんですよね。

 

 先程のペットボトルを冷やして金型から取出して完成です。

 

 ここでは、原料を仕入れ工場に持ち込み、工員を雇用し、機械を取得し、動力をつかって、製品をつくります。

 

 もうお分かりのように、一年間の製造原価を報告する計算書のことを製造原価報告書といいます。

 

 小売業であれば商品の売上原価を計算します。在庫がなければ、販売した分=仕入分であり、

 問屋さんから仕入れた商品の価格の総和が売上原価になります。

 

 製造業の場合には、仕入れの代わりに自分でつくるのですから、仕掛品(上記でいえば期末の日に完成前のプリフォーム)がなければ、当期にペットボトルを造った材料費や労務費(人件費)経費がペットボトルの製造原価になります。

 

 在庫がなく、これが全部売れれば製造原価は仕入原価と同じになります。

 

 小売り業では、必要のない製造原価報告書は、製造業では売上に対応する製造原価を計算するためにどうしてもつくらなければなりません。

 

 難しかったですか?

 

 加工が簡単なペットボトルで例を示しましたが、自動車も、化学品も鉄鋼も(ここからは執筆している今、私の周りにあるものですが)、机も椅子も、TVでも、携帯電話でもティッシュペーパーでも、パソコンでも、ビスケットの生産でも、皆同じ原理です。  

 

 製造業の原理は、原材料や部品(合わせて材料)を仕入れ、外注したり、社内で加工して、製品を作り、袋や箱に入れて、あるいはペットボトルのように、中間品として飲料メーカーに引き渡すためケースに入れて出荷します。

 

 ただ自動車は、製造の工程が複雑になり、部品や(最近は電気系統が重要ですが)ユニット、エンジンを仕入れ、シャーシに塗装したボディを乗せて組み立て(アッセンブリー)を行い、検査をしながら、やっと出来上がります。

 

 いずれにしても、製造業では材料費、外注費、労務費、経費をかけることは同じです。

 

 通常は完成までの期間が長い場合は、期末日に仕掛品が発生するため、ペットボトルのように簡単にはいきませんが、ここでいう製造原価報告書の考え方を覚えておけば、どんなモノづくりでもパターンは同じなので、分かりやすいと思います。

 

 製造原価報告書は、材料を仕入れて工場内外で加工し、製品を完成させるときの報告書として、損益計算書における、仕入原価=売上原価と同じく、製造原価を計算するための年一回行う報告書であることを覚えてください。

 

 なお、管理的には毎月製造原価報告書が作成され、月次での管理が行われていることはいうまでもありません。

 

 今回、仕入れると商品、造ると製品、工程の途中にできるものが仕掛品という用語を使いました。

 

 原料、部品という用語も使いましたが、これらは貸借対照表に計上する棚卸し資産を構成します。また射出成型機や金型についても述べましたが、これらは有形固定資産という資産となります。この辺りも薄っすら覚えておいてもらえるとよいです。

 

 ところで、文中で、損益計算書貸借対照表と、製造原価報告書の関係について少し触れていますが、キャッシュフロー計算書には、今日の話のレベルでは直接の影響はありません。

 

 但し、例えば射出成型機や金型を現金で購入(投資)したときには、投資キャッシュフローのところに、現金(現預金)のマイナスとして表示される、という関係にあります。

 

  いかがでしたか?モノをつくるとき、こんな感じで行われていることが分ると、すべてのモノを見るのが楽しくなりませんか?

 

 楽しくならない方のためには、楽しくなるように、おいおい、より詳しく話をしていこうと思います。