今回は、病院を事例にとり、部門別損益計算について説明します。
多くの病院では、病院全体の月次損益を情報として意思決定を行っています。
それでは問題点がよく理解できません。どの部署の損益がどのようになっているのかを把握して初めて部署別の課題が明らかになるからです。
部門別損益計算は、こうした要請に応えることができる、各部署別の損益を計算し可視化する手法です。
部門別損益計算は3の部門領域において管理されます。外来、病棟からなる直接(診療)部門、コメディカルからなる補助部門、そして事務部門を軸とした間接部門がそれらです。
ここで、直接部門はプロフィットセンター(収益部署)、また、補助部門は一部は収益を稼ぎ、一部は稼がない(急性期の病院でDPC制度を利用する病院では入院時の検査等で収益があがらない行為があります)プロフィットセンターです。
また、間接部門はコストセンター(費用部門)として原則、直接収益を稼ぎません。
さて、各部門には部署があります。診療部門であれば、例えば○○外来、○階病棟などがそれです。
補助部門であれば、薬剤、検査、放射線、栄養、リハ等が該当します。また事務部門であれば、医事、総務、経営企画、購買、営繕等がそれらです。
計算の過程は3つの段階に区分できます。第一次集計、第二次集計、第三次集計です。
第一次集計では、各部署それぞれの損益を個別に計算します。
第二次集計では間接部門の費用を診療部門と補助部門に配賦します。
さらに第三次集計では間接部門のコストを配賦した補助部門の損益をさらに診療部門に属する各部署に配賦します。
間接部門で発生したコストを補助部門と診療部門に負担してもらい、補助部門の収益とコストを直接部門である診療部門にというように徐々に配賦計算を行い、最終的に診療部門の各部署の損益を計算します。
このことで、すべての診療活動による収益と、病院全体の費用が比較され、部門(部署毎=外来は診療科別、入院は病棟別、診療科別)に損益が把握されることになります。
階段のように配賦計算が進むことから階梯式配賦法といわれています。
結果としてすべての損益が集約された診療部門の各部署においては、当該月の延患者数データから一人当たり医業収益や医業費用が計算され、診療部門の成果が明らかになります。
なお、第一次集計においては、各部門単独の損益が計算され、第二次集計においては間接費の費用を負担した診療部門と補助部門の損益が計算されて、それぞれの成果をみることができます。
例えば一次集計で直接部門や補助部門が赤字であれば、組織は維持できないし、間接部門の費用は予算通りであるかをみます。
また二次集計では、補助部門や直接部門は間接部門のコストを背負っていまだ利益がでているのかをみて、収益増やコスト削減の気付きとします。
いずれにしても、予算と比較することや昨年度と比較することにより、各部署の収益の増減や、費用の増減が詳細に把握できます。
また、他の経営指標と合わせてチェックすることで、各部署毎の患者数や単価、費用のかけ方に関する課題を把握できるようになります。
部門別損益計算はあらゆる病院で有効に活用することができます。これからの病院経営に必要不可欠な道具であると考えます。
なお、一般企業においても各部署の損益を毎月計算し、詳細なコスト管理を行うことで、組織全体の最適化を図ることができます。
部門別損益は、有用な情報を企業に提供する重要な管理会計であると考えています。
部門別の下位には、商品、サービス毎の損益計算もありますが、部門別損益計算の考え方が利用される必要があります。
マイ会計でみると、自分の行動別の管理ができます。
会社に勤めている人であれば、自分の仕事の種類ごとに、自分がどれだけの時間やコストをかけているのか、また、人に支援を受けているのか支援しているのかを考え、整理してみます。
そのことにより、時間の配分や、力の入れようがみえてきて、もう少しこの領域での仕事で時間をうまく管理しようとか、人脈をつくっていこうと振り返ることができます。
また、同様にリアルに組織のなかで部門別損益を行うように、会社の時間やプライベートの時間、学習の時間を軸として得られた価値を計算する枠組みとして活用できます。
社員の方も経営者も起業家も、自分の資源を部門別(カテゴリーや何等かの区分)で計算、管理することにより、資源の有効活用を行うことができるようになります。
配賦計算というテーマを自分なりに工夫したうえで、より精度の高い管理ができるようになります。
コツを覚え、マイ会計における自分なりの部門別損益計算、実行してみてください。行動が合理的になること請け合いです。