前回は、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の財務三表の説明をしました。
貸借対照表は、資産=負債+資本、損益計算書は、収益―費用=利益という構造だし、キャッシュフォー計算書は、現金(現預金)の増減を、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローに区分して、期首の現金が期末にどうなったのかを表示する仕組みになっていると説明しています。
今日は、これら財務三表に関連する製造原価報告書について説明します。
製造原価報告書とは、文字通り製造の原価を報告する計算書のことをいいます。
製造(原材料に手を加えて製品をつくること)することについて、例えばペットボトルをつくる工場があったとします。
工場では、ペットボトルの原料(樹脂ペレット=米粒状の樹脂)を仕入れ、それを射出成型機(何かを吐き出す感じの名前ですよね)という機械に金型(粘土の陶器で作った型抜きのようなもの)を装着し、樹脂を流しこんで熱をかけ、金型に流し込んでペットボトルの原型であるプリフォームというものをつくります。
それを冷却して取り出し、さらに加熱し別の金型に流し込み、筒を使って空気を入れ膨らませ、ペットボトルをつくります(二軸延伸ブロー成形法)。
ブローって風を送り込むやり方です。美容院でも使いますね。
で、工場では、例えは、サランラップも簡単に言えば、同じように樹脂を溶かして、風で広げながら冷やして巻き取っていくんですよね。
先程のペットボトルを冷やして金型から取出して完成です。
ここでは、原料を仕入れ工場に持ち込み、工員を雇用し、機械を取得し、動力をつかって、製品をつくります。
もうお分かりのように、一年間の製造原価を報告する計算書のことを製造原価報告書といいます。
小売業であれば商品の売上原価を計算します。在庫がなければ、販売した分=仕入分であり、
問屋さんから仕入れた商品の価格の総和が売上原価になります。
製造業の場合には、仕入れの代わりに自分でつくるのですから、仕掛品(上記でいえば期末の日に完成前のプリフォーム)がなければ、当期にペットボトルを造った材料費や労務費(人件費)経費がペットボトルの製造原価になります。
在庫がなく、これが全部売れれば製造原価は仕入原価と同じになります。
小売り業では、必要のない製造原価報告書は、製造業では売上に対応する製造原価を計算するためにどうしてもつくらなければなりません。
難しかったですか?
加工が簡単なペットボトルで例を示しましたが、自動車も、化学品も鉄鋼も(ここからは執筆している今、私の周りにあるものですが)、机も椅子も、TVでも、携帯電話でもティッシュペーパーでも、パソコンでも、ビスケットの生産でも、皆同じ原理です。
製造業の原理は、原材料や部品(合わせて材料)を仕入れ、外注したり、社内で加工して、製品を作り、袋や箱に入れて、あるいはペットボトルのように、中間品として飲料メーカーに引き渡すためケースに入れて出荷します。
ただ自動車は、製造の工程が複雑になり、部品や(最近は電気系統が重要ですが)ユニット、エンジンを仕入れ、シャーシに塗装したボディを乗せて組み立て(アッセンブリー)を行い、検査をしながら、やっと出来上がります。
いずれにしても、製造業では材料費、外注費、労務費、経費をかけることは同じです。
通常は完成までの期間が長い場合は、期末日に仕掛品が発生するため、ペットボトルのように簡単にはいきませんが、ここでいう製造原価報告書の考え方を覚えておけば、どんなモノづくりでもパターンは同じなので、分かりやすいと思います。
製造原価報告書は、材料を仕入れて工場内外で加工し、製品を完成させるときの報告書として、損益計算書における、仕入原価=売上原価と同じく、製造原価を計算するための年一回行う報告書であることを覚えてください。
なお、管理的には毎月製造原価報告書が作成され、月次での管理が行われていることはいうまでもありません。
今回、仕入れると商品、造ると製品、工程の途中にできるものが仕掛品という用語を使いました。
原料、部品という用語も使いましたが、これらは貸借対照表に計上する棚卸し資産を構成します。また射出成型機や金型についても述べましたが、これらは有形固定資産という資産となります。この辺りも薄っすら覚えておいてもらえるとよいです。
ところで、文中で、損益計算書と貸借対照表と、製造原価報告書の関係について少し触れていますが、キャッシュフロー計算書には、今日の話のレベルでは直接の影響はありません。
但し、例えば射出成型機や金型を現金で購入(投資)したときには、投資キャッシュフローのところに、現金(現預金)のマイナスとして表示される、という関係にあります。
いかがでしたか?モノをつくるとき、こんな感じで行われていることが分ると、すべてのモノを見るのが楽しくなりませんか?
楽しくならない方のためには、楽しくなるように、おいおい、より詳しく話をしていこうと思います。