「マイ会計」会計をもっと身近に。世界は会計でできている[石井友二]

社会人の三種の神器は、会計、IT、英語ですが、このなかで最も重要なのは会計です。会計がいかに日々の生活に入りこんでいるのか、また日々の生活を支援するのか、明らかにしていきます。会計を知り活用すれば人生を謳歌できます。充実した人生を送るための会計についてご紹介していきます。

予算実績管理で、目指すところに上がる

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 予算実績管理は、予算すなわち収入や支出の計画と実績を比較し、その差額を分析すること。そして差額をなくす解決策を考え(これが難しく、予実をうまく行う肝になりますが)、行動を修正することで、常に予算に近づき、予算達成を行うことを目的として行われる活動です。

 

 ここでは、予算、すなわち事業計画や行動計画が予め設定されていることを前提とし、予算と実績を比較し行動修正を行うことについての説明をします。

 

 ところで、予算を記載した書類である予算書のない事業に意味がないかといえば、意味があります。予算書がないからと言って経営者に経営目標がないということではなく、少なくとも今期はここまでもっていきたい、今月はここまでやりたいという思いをもって経営者は経営を行うことが通常だからです。

 

 頭のなかや手帳でその目標を設定し、自らが成果を挙げようとして行動するのは、小さい組織の行動であり特権です。しかし、一定規模があるときに、組織全体を動かし、合理的に成果を挙げようとするのであれば、予算書がなければ、組織構成員の行動が目的に合ったものになりません。

 

 「一生懸命やること」が免罪符になり、(そもそも曖昧な)決めた成果に到達しないことが多くあります。

 

 目標は、中期経営計画により3年、年度経営計画により1年、月次決算に併せて行われる1ヶ月ごとの予実管理で達成される、と理解して下さい。

 

 ここでの予算は月次で管理する指標や会計科目に合わせて設定され、毎月比較により差額分析が行われます。

 

 売上高、売上原価、売上総利益、販売費及び一般管理費、営業利益までが、現場レベルの管理対象です。営業利益後の、営業外収益や営業外費用は、以前説明したように、財務損益の対象であり、経営層が確認すべき領域です。

 

 現場の行動が成果に現れるのは営業利益迄であり、これらのうち管理可能な領域についての損益を、各部署が自部署の予算に落とし込み、実績との比較を行い成果を挙げます。

 

なお、部署にはプロフィットセンター[収益を得る部門]コストセンター[収益を得られずコストのみ発生する部門]に区分されます。コストセンターも活動の予算のなかに行動指標を盛り込み、例えば費用予算や行動目標が設定されるため、収益がないから予算がないわけではありません)

 

 ここで、自部署の予算に落とし込みという言い方は、ある意味逆です。

 

 予算がつくられる段階では、経営トップから予算編成の方針が出された後、各部署で自部署の業績を考え、上記の領域で予算をつくり、その集積された全社予算と方針との差額を調整しながら自部署の予算が決定され、目標化されます。

 

 もともと全社予算ができて、自部署の予算に落ちるという印象もありますが、最終的には部署別に設定した予算が全社予算を構成するということの認識が強いと思います。

 

 さて、最終的には自分達が決めたんだよね、という予算感を現場が持つケースが能動性を喚起するのはいうまでもありません。押し付けられた予算はどこかで忌避される可能性があります。

 

 とはいうものの、実務上は、予算編成の段階で、一定の裁量はあるけれど、結局はこの数字をつくりましょう、という天の声があるので、最終的にやる気になるかどうかは、働く人のモチベーションにかかっています。

 

 なので、成果を挙げるためには、ただ予実管理があればよいのではなく、経営全般にわたるマネジメントが必要なのはいうまでもありません。

 

モチベーションの背景はさまざまですが、本人のやりたいことと、会社の方向が一致し、役割を明確にしたうえで目標達成を約束(コミットメント)し、本人の活動を支援する仕組み(コミットメントサイクル)が必要です。

 

話がそれましたが、指標や勘定科目別に予算が決まり、その予算と実績を比較するのが、予算実績管理です。予算と実績を管理するときに不可欠なのが指標です。財務会計の勘定科目の比較だけでは大まかなことしか分からないからです。

 

予算は指標ベースでも行われる必要があります(これを先行指標と言います)。予算実績管理は先行指標と実績指標の比較で行われると言っても過言ではありません。

 

ここで、指標にはさまざまあり、業種や部署により異なります。

 

営業部であれば、損益予算以外に、訪問件数や有効面談回数、面談時間、新規顧客数、顧客一件当り粗利等の指標目標が設定され、実績と比較されます。指標はとても大事です。

 

実際には、損益項目のみを比較して差額を出しても予算と実績の乖離を生む原因を発見できないことが多いからです。

 

指標設定により、詳細な分析をエリア別、商品種別、人別、期間別等々の情報も加味しながら分析し、予算未達、あるいは予算を超えた要因を分析していくのです。

 

予算実績管理は指標管理と並行して行うことが有効なんですね。というか指標は前述のように予算の一つであるとしたほうが自然だと思います。

 

予算実績管理っぽいことをしているけれど、要因分析を本格的に行わず、ただ差額を出し、定性的な理由をつけお茶を濁しているだけの企業も多くあります。

 

差額の要因が曖昧だと解決策も曖昧になり、行動も窓が外れたものになります。もったいないですね。

 

なお、指標の設定には教科書的なものもありますが、損益に感度が高い指標を見つけ、その指標を管理し続ける仕組みが必要です。

 

どこかで指標管理を、より詳細に触れますが、大事なポイントです。

 

世の中ではKPI(重要管理指標)といういいかたで、指標を表していますが、パフォーマンス(成果)の鍵となる指標として役に立つかどうかは、使い方次第、ということになりますね。

 

繰り返しになりますが、予実により差額の要因分析→要因の改善、継続に向けた行動をとる、というところに進んで始めて、本当の予実管理になることを忘れないようにしましょう。

 

到達点と現状の乖離を発見し、要因分析、解決策策定の計画化、PDCAサイクルに乗せた行動、というながれをつくれるかどうかが大切です。

 

予算実績管理の巧拙は組織運営に大きく影響しますので、留意が必要です。

 

これまで予実の概要を説明しました。

これからも何回か、さらに詳細に説明しますので、予実の概要をつかんでくださいね。

 

次は、いったん財務三表に戻り、財務分析(経営分析)について話します。