「マイ会計」会計をもっと身近に。世界は会計でできている[石井友二]

社会人の三種の神器は、会計、IT、英語ですが、このなかで最も重要なのは会計です。会計がいかに日々の生活に入りこんでいるのか、また日々の生活を支援するのか、明らかにしていきます。会計を知り活用すれば人生を謳歌できます。充実した人生を送るための会計についてご紹介していきます。

後悔しない設備投資の方法

 

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 会計監査やコンサルティング、会計業務で多くの企業を見てきた経験から、投資をしてうまくいかなかった企業がどれだけあるのかと驚きます。

 

 投資意思決定を行うとき、本当の意味での投資経済性計算を行っていない結果です。

 

 私も、過去を振り返ると、考え方を熟知しているのに、投資に前向きになる余り、プロセスを割愛してしまっていたことが大半で、この記事を書きながら、とても反省をしています。

 

 ということで、購入のメリット、リースやローンでの対応、レンタルの採用。そして他の機器で代替した場合などを検討したのち、投資や設備投資を行うときには、それらによるメリットが得られらかどうかを検討しなければなりません。

 

 投資したキャッシュよりも、キャッシュが増加するメリットがあるから投資する、ということが正解です。

 

 収益が増加するけれども費用が大きく利益がでないしキャッシュも残らないのでは、意味がありません。管理会計の重要論点である投資経済性計算が今回のテーマです。

 

 さて、100の設備投資をして、8年間で200の収益があがる。減価償却費以外の経費がその期間で80だとするとします。

 

 税引き後利益は、200-(100+80)180=20×(1-0.33[実行税率])(注)=13.4です。

 

(注)法人所得税の場合、事業税の損金算入を考慮して法人税、住民税および事業税の所得に対する税率を合計した実質的な所得税負担率。中小法人の数字。

 

 減価償却費が100ですから、これはキャッシュアウトしていない費用なので、キャッシュを計算するときには、13.4+100とします。得られるキャッシュは113.4。

 

 なので借入金を8年で返済しても113.4-100=13.4のキャッシュが残るので、この投資は意味のあることが分かりました。

 

 損益計算書でみると、売上高―売上原価=売上総利益―販売費及び一般管理費=営業利益±営業外損益=経常利益±特別損益=税引き前当期利益―法人税住民税等=(税引き後)当期利益になります。

 

 上記の計算により、200-180=20の税引き前利益6.6の税金を払い手残りの現金(預金)は13.4となります。細かいことを除けばこの式に当てはめると分かりやすいですよね。

 

 繰り返しになりますが、減価償却費分は機械を費用化した金額で、購入時に支払って終わり。その都度現金を使っていない費用なので、現金が出て行っていないとして、その額を税引き後利益に足します。

 

 現金残高は113.4となり、100の借入金を返しても13.4の現金が残るという結果です。

 

 (設備)投資経済性計算には、回収期間法と、投下資本利益率法や内部利益率法、正味現在価値法があります。

 

 回収期間法は融資により投資した資金が何年で回収できるかを、そして投資資本利益率法その他は、投資の収益性と現金の時間価値を考慮するものです。

 

 今回は、回収期間法と正味現在価値法を紹介します。

 

 回収期間法は、回収期間(年数)=設備投資額÷年間キャッシュフロー増加額(税引き後利益償却前利益)という式で計算されます。

 

 投資は何年で回収すればよいのかを考えます。

 

上記の例でいえば、

100÷(113.4÷8=14.175)=7.05年となり、8年目で充分に回収できます。法定耐用年数を8年で計算しているので、ぎりぎり良いということになります。

 

 一般的に設備資金はもう少し長めの期間で返済しますが、その期間内で返済できるという前提がなければ投資できないと考えて、返済期間も耐用年数期間で返済するとして、上記の計算になっています。

 

 正味現在価値法は以下のようになります。

 

 現在価値(PVPresent Value)=これから受け取る現金÷(1-金利×n)です。nは年数です。

 

正味現在価値(NPVNet Present Value))=Σ(総和)現在価値PV―投資額となります。

 

計算した正味現在価値がプラスであれば、投資は有利であり、マイナスであれば不利とする方法です。

 

先ほどのケースでいうと、例えば毎年14.175をキャッシュで8年間得るとしていましたが、銀行でもし金利2%で運用できるとすると、1年後の14.175の現在の価値は、14.175÷(1+0.02)=13.897となります。

 

 今13.897を1年間運用すると1年後に14.175になるので、現在価値は13.897となるんですね。

 

 では2年目の現在価値は、同様に14.175÷(1+0.02×2)ですので、13.6298となります。13.6298×1.02×1.02=14.175になります。

 

 となると、8年間、毎年得られる14.175を現在価値に割り戻した、8年間の合計は104.2214になります。これがPVの合計額です。

 

 正味現在価値(NPV)は、104.2214-100=4.2214です。

 

 なので、有利という結果になります。

 将来投資により得られるキャッシュを現在価値に置きなおしてその合計が投資する金額より多きければ投資ということになります。

 

 複数案ある場合には、いくつかの投資を比較しNPVが一番大きいものを投資対象とするという使い方をします。

 

 なお、今は銀行に預金しても運用利回りはなく、割引率は成立しないほど小さいので、割引をしない回収期間法でも、判断はできそうですね。

 

 詳しくいうとこの割引率は資本コストといっていますが、自己資本コストと他人資本コストの加重平均をして加重平均資本コストWACCWeighted Average Cost of Capital)を使います。

 

 WACCとは、会社の資金調達に伴う費用をいい、銀行への利子、社債権者への利回り、株主への配当などをいいます。

 

 ここでは、簡単に銀行の金利をつかいましたが、きちっと計算するときにはWACCを使います。複雑なので今は無視して良いと思います。

 

 書き終わってみて自分でも難しいな、と思います。

 

 ここで学習することは、

(1)投資をするときには、投資により得られるキャッシュの合計を出し、

 

(2)得られるキャッシュが多ければ投資をする

 

(3)しかし、回収期間が重要で、少なくとも減価償却期間以内に回収したい

 

(4)また、投資から得られるキャッシュの現在価値をみる方法もある

 

(5)得られる現在価値の合計が投資を超えれば投資は良い

といったことです。

 

 得られるキャッシュの計算方法や、キャッシュを現在価値に割引く方法を書きましたが、深く学習したい方は、もう少し他の資料もチェックすると良いでしょう。

 

 マイ会計で考えること。投資をするときには、本当に得られる価値が投資額を超えるのかを考えてみる必要があります。

 

 不動産は言うに及ばず、自動車や欲しい物への投資から得られる価値が、投資額を超えるのか、何年で回収できるのか、他に運用したほうが全体的な価値につながるか、といったことを検証して、納得してから投資を行うことを推奨します。

 

 なお、ここで価値や効用はマイ会計なのでら非金銭的な心の価値や効用も含むと考えて良いです。

 自分の価値観が大きく影響します。

 

 ただ、借入金で投資をする場合は、給与や賞与が将来どのように推移するのかを推測し、ムリの無いように投資することと、前述した投資判断を行う基準を自分で設定し、慎重にさまざまな代替案を比較しながら、決定していかなければなりません。

 

 また、途中で予想通りの金銭的、非金銭的な価値、効用が得られないのであれば、投資を引き上げたり、処分する。

 

 さらに、給与や賞与が下がったり、興味がなくなるなど、当初想定した環境や条件が変更されたときに、投資活動を修正していくことが必要ですね。

 

 自分のお金を使う、銀行から借りて使う、というときに投資は意味があるのか、について一回収期間法や正味現在価値法を思い出してください。リースや中古の選択肢も入れると、判断は更に多様になりますね。企業でも同じ検討を行うことがあります。

 

 という事で、設備投資の経済性計算を知っていると、自分が投資するときのバックボーンになりますよ。

 

  マイ会計、黄金の13会計フレームワークの説明をこれで一通り終わります。  

  

 もちろん、これからなぜ黄金の13なのかの説明や、個々のフレームワークの見直しをしていくことにします。

 

 これけら、再度世の中を見渡し、会計の意味を知る旅に出かけましょう。